2012年10月28日日曜日

「アルゴ」

26日に公開したベン・アフレック監督、主演の映画「アルゴ」を観てきました。
イラク国民のクーデターによりイラク国内に取り残された外務官6名を米国に移すために、CIAの“救出”のスペシャリスト、トニー・メンデス(ベン・アフレック)がその役を務めます。
いかにイラク人を騙し、米人を逃がす事ができるのか…彼が立てた作戦がハリウッド作戦と呼ばれるSF映画のロケハンを偽装するという斬新なもの。
この一見愚考かつ稚拙に思える話が実話なのだから面白い。
映画は常に、イラク人の予知不能な民族性で緊張感が漂い、息つく間はありません。終盤の刹那の攻防は見ものです。

CIAの映画と言えばボーンシリーズなどがありますが、この映画はよりCIAの仕事を現実的に受け止めることができます。(だって実話だしね…)

音楽は「英国王のスピーチ」のアレクサンドル・デスプラ。



2012年10月21日日曜日

「タイタンズを忘れない」

前回「マンデラの名もなき看守」という黒人差別をテーマにした作品を観ました。そして次の作品として偶然選んだ作品がまたも【人種の壁】をテーマにした実話が基。「タイタンズを忘れない」(2000)というアメリカンフットボールの物語。
よく映画の番宣で『全米が泣いた』というフレーズがありますが、私はこの作品のためにそのフレーズがあると思っています。それ程に私も涙し、感動しました。舞台は1970年の人種差別が渦巻くアメリカヴァージニア州に生まれた白人・黒人混合のフットボールチーム。
赴任してきた黒人コーチ、ブーン(デンゼル・ワシントン)とディフェンスコーチとしてヨースト(ウィル・パットン)が指揮をし、点と点が線になり、そして円になり、個人・チーム・地域を巻き込みながら優勝するために奇跡を起こしていきます。
事実は小説よりも奇なりとはよく言ったもので、本当にこれが実話なのだから驚きです。後半40分は涙が止まりませんでした。
アメリカンフットボールをあまり知らない人でも楽しめる、かなりお勧めの映画です。流石はディズニー。

映画というのはその作品ひとつひとつを観てももちろん面白いものですが、繋がりのある関連性の高い作品を見るとお互いの価値が相まって面白さが倍増することもあります。今作と「マンデラ~」もそうですし、例えば9.11のテーマで言えば、ハイジャックされた飛行機を舞台にした映画「ユナイテッド93」を観た後、墜落テロが行われた場所をテーマにした「ワールド・トレード・センター」を見ると、流れを掴みやすくなり、より感情移入できます。お勧めの映画鑑賞スタイルです。


「マンデラの名もなき看守」

南アフリカのアパルトヘイト体制下、とある看守の手記を映画化した「マンデラの名もなき看守」(2007)を観ました。
もちろんタイトルのマンデラとは元南アフリカ代8代大統領ネルソン・マンデラの指しています。
この映画の称賛すべきは邦題で、原題は「Goodbye Bafana」となっています。もちろんこのタイトルもセンスが光る素晴らしいタイトルだとは思いますが、何がテーマかまるでわかりません。それをマンデラという誰もが知る人の名前を用いることで、少なくとも原題よりは手を取ってもらう確率は上がったのでは無いでしょうか。

この作品の見所は、徹底した役作りです。この映画は作中で22年の月日が経過します。その時の流れに違和感を感じさせることの無いメイクと俳優陣の演技が素晴らしかったです。
そして何より黒人差別という重いテーマに関わらず、観ることに苦痛をを感じません。それはマンデラ視点でも黒人視点でも無く、ジョセフ・ファインズ演じる看守視点で物語が描かれているため、実際に起こった事件・事故・殺人などは全て便りとして届けられるからです。
これが実際のアパルトヘイトを軽視しているという声もあるかもわかりませんが、より大勢の人に当時の南アフリカを知ってもらうにはいい構成だったと思います。そしてもう1つこの作品の興味深い点が、俳優人の出身がバラバラだということ。
ジョセフ・ファインズはイギリス人だし、奥さん役のダイアン・クルーガーがドイツ、デニス・ヘイスバートはアメリカです。監督のビレ・アウグストはデンマーク。この作品には人種差別を無くすという願いが込められているからかですかね。


最後に、知識不足の私が【そもそもなぜ南アフリカでアパルトヘイトが行われているのか】に興味を持ち調べてみました。
恐らく多くの人が誤解しているのは南アフリカの成り立ち。黒人の国のイメージが強いが、この国は黒人は本来黒人は暮らしておらず、白人が入植してつくった白人の国だということ。つまり黒人が移民してきたのです。黒人の人口増加率は著しく、白人が黒人に国を乗っ取られてしまうのを危惧し、アパルトヘイト制度を施行した…という訳らしいです。
うーん、歴史の勉強を持っとせねば…


2012年10月16日火曜日

「マディソン郡の橋」

「マディソン郡の橋」(1995)を観ました。
クリント・イーストウッドが製作・監督・主演を務め、メリル・ストリープと共演。
不倫をテーマにしていますが、日本の昼ドラの様に、醜悪などろどろとした話では無く、美しい大人な愛の物語です。
アイオワ州の片田舎で、単調な日々を送る主婦(フランチェスカ)と、世界を旅するカメラマン(ロバート)が出会い、恋に落ちるたった4日間の出来事。
初めて出会った時、2人が1歩ずつ歩み寄るシーンがありますが、この時点で恋を示唆しているのがわかります。そしてロバートがフランチェスカに言った「僕は君に会うために旅をしてきた」という言葉がそれを裏付けています。
2人がとった愛の形がとても綺麗でした。
不倫・浮気は悪…そんな社会を風刺したクリント・イーストウッドの名作中の名作。
この橋は、死ぬ前に一回見に行きたいな。


2012年10月9日火曜日

「Somewhere」

ソフィア・コッポラ作「Somewhere」を観ました。
恐らく10人中8人は「つまらない」と言うでしょう、しかしこの作品はとても深く考える部分が多い作品だと思います。
ストーリーは本当にシンプルそのもので、娘の姿を見て、改心する親の話です。起承転結を凝縮すると恐らく5分で終わります。この映画の特徴は”間”を十分過ぎる程取ることで、ソフィア・コッポラのメッセージを感じる事ができます。ポールダンスで踊るシーン、プールで往復するシーン、シャワーシーン…この間が何を意味するのか、それを考えることがこの映画を鑑賞するということであると思います。
ちなみに娘役のエル・ファニングは僕の大好きな女優さんです。今回も本当に可愛すぎて、末恐ろしいです。もちろんダコタ・ファニングも大好きですが。
この映画は休日にハーブティーを飲みながらみたいお洒落な映画です。
オススメ(^^)v





「英国王のスピーチ」

アカデミー作品賞受賞作「英国王のスピーチ」を観ました。
やはり前評判のごとく素晴らしい作品でした。俳優陣も豪華ですね。
英国王役にコリン・ファース、治療者ローグはジェフリー・ラッシュ、英国王の兄にガイ・ピアーズ、エリザベス役にヘレナ・ボナム=カーター…と全員知ってる名前です。
ニューヨーク誌は「魂を昇華する物語」と賞賛してましたが、まさにその通りで、思いを昇華させた形の1つが「言葉」なのかなと思います。その昇華のさせ方が下手な、吃音症に苦しむ王と独自の手法でそれを治療するローグの出会いと葛藤と成長の物語です。
第二次大戦前夜の英国王のスピーチ、それにどれほどの影響力があるか計り知れませんが、そのスピーチがあって今の英国、そして日本があると思うと感慨深いです。
音楽は「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い 」のアレクサンドル・デスプラです。



「フィッシュストーリー」

伊坂幸太郎が原作「フィッシュストーリー」を観ました。私は伊坂幸太郎の小説の大ファンですが、この作品に関しては原作を読んだことはありませんでした。映画で内容を知ることになったのですが…
ストーリーは、いくつかの時代の話が並列して行われ、最後に一つにまとまります。頭の中で整理することもそれほど難しくなく、最後にはすっきり終えることができます。スタッフロールの役名の部分ででハッとさせられたのはこの映画は初めてです。そこで全てがひとつに繋がりました(ただ単に私の思考回路が鈍いだけかもですが…)
この映画の鍵はずばり「Fish Story」という曲です。斉藤和義が楽曲プロデュースしており、ブルーハーツよりファンキーな感じに仕上がってます。というか高良健吾、普通に歌上手過ぎます。
総じて、感想はまぁまぁ面白いっといったところです。「アヒルと鴨のコインロッカー」程の衝撃や、「ゴールデンスランバー」の様なハラハラ感も無いですが、子供心くすぐるノスタルジックな感じが見ていてよかったです。
でもこれって結局誰が主役だったのだろう…?


「グッバイ、レーニン!」

最近、見る映画に外れがありません。まぁ評判のいい映画を選択してるのでそのはずなのですが。
今回観た「グッバイ、レーニン!」も当たりでした。2003年公開のドイツ映画です。
まず、題名にセンスを感じます。レーニンと書いてあるにも関わらず、レーニンは銅像でしか出て来ません。しかし間違いなくレーニンはこの映画の主役といってもいい程の役を担っています。
奇しくも私が生まれた1988年はドイツがまだ東と西に分かれており、翌年にベルリンの壁が崩壊しました。丁度その時期のとある社会主義の母がいるファミリーの視点で描いています。この映画の面白いポイントが東西統一をフィルムスピードを上げるなどしてコミカルに表現していることです。自虐的に社会主義と資本主義を描いているので、どちらにも反感を抱かずみることができます。
この映画のストーリーも面白いです。社会主義者の母に気付かれないように、資本主義化してゆく街並みをごまかし続ける息子の看病の姿勢に愛と笑いを感じ、同時に時代背景も知ることができます。


「ビッグ・リボウスキ」

映画好きにとことんお勧めしたい映画に出会いました。
鬼才コーエン兄弟が生み出したコメディー映画「ビッグ・リボウスキ」…とことん面白いです。正直ストーリーは複雑で、すべてを理解するには難しい作品ですが、そんな事はどうでもいいのです。
ジェフ・ブリッジス演じるダメダメ男ジェフリー・“デュード”・リボウスキが同性の大金持ちに間違えられて、事件に巻き込まれます。
が!さらにそれをジョン・グッドマン演じるデュードの友達ウォルター・ソブチャックがハチャメチャにします。
突っ込みどころが多すぎて、何を書いていいのかわからないほど。
昔のドデカイ電話を持ち歩いてる割に電話に出なかったり、イーグルスを否定し、クリアデンスクリアーウォーターリバイバルを敬愛してる割に、「ホテル・カルフォルニア」が流れてきたり、友人の位牌をコーヒーの缶に入れちゃったり。
年に1度は観たい、素敵な映画に出会えました。

ちなみにデュードがいつも飲んでるお酒「ホワイト・ロシアン」が少し気になったので作り方を調べてみました。

コーヒー味リキュール   60cc
ウォッカ  60cc
生クリーム(又は牛乳) 100cc

今度飲んでみたいと思います(^^)


「12人の優しい日本人」

三谷幸喜作品「12人の優しい日本人」(1991)を観ました。
当時に”もしも日本に陪審制度があったら”という仮定のもと作られた、陪審室で繰り広げられる陪審員達の討論です。
わずか5分で無罪と決まったものの、そこから人情劇が始まり、判決はもつれにもつれます。
良くも悪くも人間味あふれるド素人たちの根拠のない主張に笑えます。
「美人だから無罪」とか「30過ぎの無職男は死んで当然」とか。
中には理論的に論破してゆく人もいて、そこから安楽椅子探偵的に話が進みます。三谷幸喜は閉鎖空間においてストーリを作り出すのが本当に上手です。
この映画が暗示したかの如く、現在の日本では陪審制度が始まっています。もし自分が陪審員になったらどうするか、一度この映画で勉強されるのもいいのではないかと思います(笑)
ちなみに若かりし頃の豊川悦司もいます。


「グッド・ウィル・ハンティング/旅たち」

「グッド・ウィル・ハンティング/旅たち」観ました。
端的に言えばマット・デイモン演じる天才ウィル・ハンティングと、ロビン・ウィリアムズ演じるセラピスト、ジョージマグワイアとの出会いの話です。キャッチコピーは「あなたに会えて本当によかった」ですから、この出会いがいかに重要かがわかります。
天才が故、あまり理解されてこなかった考えがジョージによって開放され、愛を知ります。
素晴らしいのが、この脚本力。有名な話ですが、幼馴染のマット・デイモンとベン・アフレックが無名時代に脚本してます。
それがアカデミー賞脚本賞をとってしまうから驚きです。
最後のセリフがもう、本当にかっこ良いんです。ぜひ観ていただきたい。そして脚本だけでなく、マット・デイモンの演技力も素晴らしい。ハーバード大出身の片鱗が見てとれます。
個人的に気になったのは、ランボー教授を演じていたステラン・スカルスガルドという俳優。どこかで見たことあるなと思ったら「ドラゴン・タトゥーの女」のあいつでした。

監督は「小説家を見つけたら」のガス・ヴァン・サントで彼はアカデミー監督賞にノミネート。音楽は「スパイダーマン」などを手がけるダニー・エルフマンです。優しい音楽で、心地よい気持ちになれます。